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ジグザグ•ガール マーティン•ベッドフォード

わたくし、とにかく『漫画家とヤクザ』が好きで好きでたまらないんですが、なんでこんなに累ちゃんと吾妻さんの行く末が気になって仕方ないんだろうかと思い当たったのが、この『ジグザグ•ガール』です。
『漫画家とヤクザ』の男女のポジションを入れ替え(吾妻さんにあたるのがヒロインのローザ、累ちゃんが主人公のレッド)、テイストを力いっぱいビターに振り切ったイメージですね(あくまで個人の感想です)。

レッドは、ひょんなきっかけから見知らぬ他人だったローザと体の関係を持ち、翌日から一緒に暮らしはじめます。
長い時間を共に過ごすうちに、お互いに無くてはならない存在になるものの、ローザにはどうしようもなく辛い過去があり、愛や恋にはみずから一線を引いています。
一方のレッドは、ローザを愛していますが、セックスが上手すぎるローザに対していつしか一抹の不安を抱いてしまいます。
やがて、2人の関係はある日、ローザの突然の死という最悪のかたちで終わってしまいます。ローザを喪ったレッドは、ローザがその日、何のために何処へ行こうとしていたのかを探る長い旅に出るのですが、その旅を通して明らかになるのは、あまりにせつない『秘密と嘘』です。

ここで鍵になるのは、レッドの職業です。
レッドは奇術師です。
奇術師なので、人を騙すのはお手のもの。つまり、レッドはいわゆる『信頼できない語り手』なのですね。

ストーリーはレッドの視点で進んでいきますが、合間合間にローザのモノローグが差し挟まれ、読者にはローザの気持ちの変化がわかる仕掛けになっています。

そう、読者にだけはわかるんですよ、ローザがどれだけレッドを愛しているかって。そして、ローザ自身がそのことに気付いたときには、もう取り返しのつかない状況になってしまっているんです…。
『クラダリング』というアイルランドの指輪にまつわるエピソードがあるのですが、これがまぁ、せつない。

ちなみにこのミステリ、何が凄いってBLようそまで含まれるところです。レッドの旅に協力してくれる奇術師仲間なんですが、彼には同性の恋人がいるうえ、かつてレッドに思いを寄せていたこともあるという…。

















by mejewellery | 2017-09-06 20:52 | ミステリ